研究概要 |
今年度に行った研究で得られた主な成果を要約すると以下のようになる。 1.気泡流の揺動流モデル:主流に速度滑りが存在するとき液相がつねに乱れた状態にあると仮定する。このとき中間尺度の空間・時間に関する平均操作により,液相及び気相の連続の式に乱流拡散項が,気泡の運動方程式に気泡間反撥力項が導入される。これらの項は方程式系の適切性を保証し,ボイド波の特性を旨く表す。 2.気泡流におけるボイド波の不安定化・安定化の機構:上のモデルを線形化した式により,高周波数の波はつねに減衰するが,低周波数の波は乱れが小さいとき不安定になる。しかし,不安定は乱れを増大させ,不安定を抑制する。このように気泡流は不安定化・安定化を自己制御する機能を備えている。 3.ボイド波に対する発展方程式の適切性とソリトン/カオス解:上のモデルに逓減摂動法を用いて非線形の効果を考慮すると,ベニーの非線形発展方程式が得られる。この式は多様な遷移過程を経た後,ソリトン的パルス列からカオス的パルス列に発展する解を示す。 4.垂直型水-窒素二相流ブローダウン実験装置による実験:加速ノズル内の気泡流について,主流条件(液相相流速,速度滑り,ボイド率)と乱れ特性(圧力乱れの強さ,スペクトル密度関数)の相関を調べ,液相流速,速度滑り,ボイド率の増加に比例して,乱れの強さ,スペクトルの高周波成分の増加を確認した。また,スペクトルの低周波数成分から流れのソリトン/カオス的発展を観測した。これらの実験結果は上の理論的結果と少なくとも定性的には一致している。
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