研究概要 |
植物根の機能を遺伝育種学的立場から究明するため,イネ品種オオチカラ及びIR30のM2集団から根の成長や形態に関する突然変異体を選抜し、得られた短根突然変異系統RM1,RM8,RM10及びLM10の遺伝的・形態的解析を行った. オオチカラから誘発されたRM1幼植物の根長は野生型の50%であったが,草丈ははぼ同じであった.また根毛の分布や数もほぼ同じであった.しかし,RM1の根の皮層細胞長は野生型の50%であった.オオチカラから誘発されたRM8及びRM10幼植物の根長は野生型のそれぞれ70%及び30%であった。両系統の根の皮層細胞長は野生型とほぼ同じであり,RM1での結果と併せ考えると,遺伝的な短根性は細胞長の短縮または細胞数の減少に起因すると推察された.IR8から誘発されたLM10幼植物の根長は野生型の30%であったが,草丈はほぼ同じであった.茎葉や根の伸長は光照射下では抑制され,暗黒下では促進されることはよく知られているが,LM10幼植物の根は光照射下で促進され,LM10は他の短根突然変異系統RM1,RM8及びRM10と異なる特性をもつことが明らかになった.RM1,RM8及びRM10と野生型とのF2幼植物における根長の分離から,これらの短根性はいずれも単因子劣性型の突然変異に起因すると考えられた.また,3突然変異系統間の交雑結果から,それらは相互に異なる遺伝子によって支配されることも明らかになった.LM10と野生型とのF2幼植物における根長の分離が3 : 1に適合しなたったので,F3幼植物における根長の結果を併せ考えたところ,LM10の短根性は単一の劣性遺伝子によることが明らかになった.さらにLM10の短根遺伝子とRM1,RM8及びRM10の短根遺伝子との相補性を調べた結果,それらは相互に異なる遺伝子であると推察された.
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