研究概要 |
1.成熟特性:10品種についてエチレン生成の面から成熟特性を調査したところ,傷害エチレンはすべての品種でみられたが,2品種については成熟エチレンが認められなかった。そこで,エチレン生成系について検討するため,エチレン生成系の二つの律速酵素であるACC合成酵素とACC酸化酵素を調べたところ,成熟エチレンがみられない品種ではACC合成酵素活性が制限要因になっていることがわかった。中国ナシはこれまで追熟型の果実といわれてきたが,本研究の結果,成熟特性が品種によって異なることが明らかになった。 2.低温感受性:13品種を用いて,全果及び果実から誘導されたカルスについて,5℃下での障害発生状況を調査したところ,4品種では2〜3週間後に明らかに果肉褐変が認められた。障害発生果について電解質漏出を調べた結果から判断して,この障害は低温障害と考えられた。このことから,中国ナシ果実は品種によって低温感受性が異なることが明らかになった。しかし,その理由については種々調査を試みたが明らかにすることはできなかった。 3.エチレン生成系の遺伝子レベルでの解析:中国ナシ果実のエチレン生成系は品種によって異なることが明らかになったので,エチレン生成系の二つの酵素,ACC合成酵素とACC酸化酵素をコードする遺伝子について品種間比較を試みた。クローニングしたDNA断片の塩基配列とアミノ酸配列を解析し,ACC酸化酵素遺伝子については明らかにすることができた。ACC合成酵素遺伝子については目下解析中である。また,遺伝子発現についての解析も引続き鋭意実施中である。
|