研究概要 |
カンキツにおける遺伝解析は幼若期間が長いこと,珠心胚形成があること等々多くの問題があり著しく困難であったが,分子遺伝学の進歩によりこれらの手法を用いた連鎖解明が最近急速に進んでいる。これらを分子遺伝子マーカーとして活用するためにはどの染色体上に乗っているのかを明らかにする必要がある。そこで本研究においては三倍体を用いてトリソミックシリーズを作成し,相同染色体座乗遺伝子の同定を計画した。 二倍体と三倍体,あるいは三体体に二倍体を交配した場合,いずれも単純トリソミ-(2n=19)実生を得た。しかし,単純トリソミ-実生の出現率は予想に反し,著しく低率であった。特に二倍体に三倍体を交配した場合,ほとんどが二倍体であり,異数体の出現率は著しく低率であった。三倍体に二倍体を交配した場合,比較的多数の異数体を得たが,単純トリソミ-実生はかなり少なかった。これらの交配において出現した不完全種子内の生育不良胚を培養したがほとんど実生化することが出来なかった。実生化できた10個体には単純トリソミ-個体はなかった。今後は培養法の改良を検討したい。 本研究によって18の単純トリソミ-実生を得たがこれらの多くは生育がかなり悪く,枝葉をアイソザイム分析に供試することができなかった。またこれらの染色体の形態を諸方法で調査したが,どの染色体が三染色体となっているのかを明らかにできなかった。 以上の様に本研究においてはトリソミ-実生の作出にはある程度の成果が得られたが,トリソミックシリーズの確立には至らず,相同染色体に座乗する分子(アイソザイム)遺伝子群を同定できなかった。今後はさらに多数の単純トリソミ-実生を作出すると共にこれらの生育を促進して,三染色体の同定と座乗遺伝子群の解析を進めたい。
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