研究概要 |
本年度,本研究費で行った主な事項は下記の通りです。 (1)横浜開港資料館などに収められた幕末から明治期に撮影された写真の中うち,当時の日本の植生景観を知る資料となるものの一部(関東地方,東海地方)を複写収集した。 (2)関東地方南西部と箱根・伊豆地方については,それらの写真に写された場所の現況調査およびその現在の地形情報等の収集を行い,それらの写真をパソコンによるシミュレーションモデルや現況と比較検討することなどにより,その地のかつての植生景観を明らかにする試みを行った。 (3)明治10年代に測図された迅速図原図の視図に描かれた場所のいくつかの現況調査およびその現在の地形情報等の収集を行い,それらの視図とパソコンによるシミュレーションモデルや現況との比較検討などにより,関東地方南部の明治10年代の植生景観を明らかにする試みを行った。 先の文献や地形図を中心とした考察では,関東地方の一般の里山には草原や樹高の低い森林が相当広く見られたこと,また,社寺林にもマツの割合が多かったことなどが明らかとなったが,以上のような写真や絵図類を中心にした考察から,たとえば,関東地方南部の一般の里山の高木の樹種としてはマツの割合が多く,その高さはふつう10〜15m程度であったこと,また,その地のマツなどの高木が存在する里山では,それらの高木が山の上部付近に残されることも多かったこと,あるいは,関東地方南西部の社寺林では面積的には小さいものの,今日と比較的似た植生の存在するところもあったこと,また,その他の社寺付近では,25mから30m前後もある相当高い樹木が見られるところもあったことなどが明らかになった。 一方,箱根・伊豆地方については,文献や地形図や写真などを総合的に検討することにより,草原や低木林の割合の多い明治期のその地の植生景観が明らかとなった。
|