研究概要 |
東洋に原産地を持つツバキ属植物はヨーロッパ南部,米国,オーストラリアなどの世界各地で近年庭園の花木として愛用され,育成された品種も1万余を越えるに至っているが,さらに新規で画期的な耐寒性,耐暑性に優れた品種の育成が望まれる.本研究は、これまでのツバキ属植物にみられない同質4倍体(auto-tetraploid)個体の育成を目的として行うもので,同質4倍体が持つ巨大性,耐寒性,耐暑性などを得ることを期待している. 平成5年度に先に採集していた同質3倍体品種群を持つといわれるヤブツバキ(Camellia Japonica)の中から,肥後ツバキを中心に同質3倍体10品種を選抜し,これらの品種を母系とする交雑を行った.また,一方同質2倍体を用いてコルヒチン処理を実施した.平成5,6年度には購入した光学顕微鏡を用いて,これら同質3倍体品種の染色体数および核型の調査を実施した.同質3倍体個体を母系とする品種間の交雑および自家受粉による交雑によって得た種子を播種して,若干の実生苗を現在育成中である.これら実生によって得た個体数10株を培養し,それぞれの株の葉の気孔と根端細胞の分裂像を光学顕微鏡で検鏡することによって同質4倍体個体の選抜を行った。これらのうち,肥後ツバキ品種「熊谷」の自然実生の中に明らかに4倍体個体と思われる大きな気孔をもつ1個体を見いだした.今後本研究の発展のために、研究材料として平成6年度には異質倍数体と考えられるツバキ品種を若干個体を収集した.今後の研究の方向として現存する同質3倍体品種(肥後ツバキ)からの交配実生および幼苗生長点のコルヒチン処理による同質4倍体を含む異質倍数体個体群の育成,ついで同質4倍体個体の同定選抜並びに4倍体間の交雑によるF_1の育成,その形態的および生態的諸特性の調査などを予定している.印刷物による発表は4倍体個体を確認し目的とした品種育成が可能となった後に行う予定である.
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