研究概要 |
新規選択性除草剤を創製・開発するには長年月と多大の経費を必要とするが,毒性低く,環境に安全で,安価でかつ長年月使用されて問題の無い非選択性除草剤に対して抵抗性の作物を細胞工学的手法で作出すれば,これはこの作物に対する選択性除草剤を創製したことと同価となる. 本研究では,この方向でいくつかの試みを行ったが,ある程度可能性を見出したグリホセ-ト抵抗性ベントパタ-(洋芝の一種)およびパラコート抵抗性ヒマワリ作出について検討を行なった。 除草グリホセ-ト抵抗性ベントパタ-の選抜については,カルス培養中の共存グリホセ-ト濃度を100μMより,250,500,1,000μMと順次上昇させることにより,1,000μMでも生育できるカルスを得た.また,シキミ酸蓄積量を定量した結果は,耐性カルスで感受性カルスの1/6以下であることを示していた。 一方,除草剤パラコート抵抗性の雑草ヒメムカシヨモギと油脂作物であるヒマワリとの細胞融合によるパラコート抵抗性ヒマワリの作出に関しては,両者のプロトプラストの調製および培養について数多くの実験を行ったあと,最適條件を決定した。酵素処理によって得られたヒマワリおよびパラコート抵抗性ヒメムカシヨモギのプロトプラストを液体倍地中で,それぞれ10^5個/mlに調製したあと,両プロトプラストを細胞融合装置(島津SSH-10)で電気融合法により融合させた(交流周波数1MHz,交流初期印加電圧30V,パルス幅40μS,パルス電圧240V,パルス電界強度0.8kV/cm)。融合体をMS倍地(NAA0.2ppm,BA0.5ppm),25℃,3,000luxで2カ月培養したあと,パラコートを含むMS倍地に移植した。非融合ヒマワリコロニーは10^<-5>M以上のパラコートでカルスを形成しなかったが,融合細胞はこの条件でカルスを形成し,かつ植物体再生が認められた。
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