木材腐朽菌類53種と、Pseudomonas属菌を主体とする6種の細菌との相互作用を素寒天上で検討したとこえろ、38種の木材腐朽菌類が供試細菌1種以上に対する溶菌性を示した。これらの木材腐朽菌の菌糸は、通常、細菌コロニーに対し方向性を持った伸長を示し、細菌コロニーへの侵入後コロニー内で旺盛な分枝を行った。シイタケ菌とヒラタケ菌は極めて類似した細菌溶解様式を示した。菌糸の攻撃を受けると、細菌の細胞質がまず消失し、次に細胞壁が溶解した。この細胞壁溶解過程には微細形態的にみると、(1)細胞壁がまず微繊維(幅:約0.02μm)化し、これら微繊維がさらに切断されて粒状化するタイプと、(2)細胞壁が連続的により微細な粒子に切断されてゆくタイプの2種類が認められた。 Pseudomonas tolaasii数菌株のシイタケ子実体に対する病原性を検討したところ、ヒラタケより分離された菌株が最も強い病原性を示した。これに対し、エノキタケからの分離株はシイタケに対する病原性を持たなかった。一方、シイタケ菌の細菌病抵抗性には菌株間差異があることが明らかになった。この点に関する遺伝学的解明は今後の重要な研究課題である。本研究期間中に。原木栽培シイタケに対して強い病原性を持つP.tolaasiiの菌株を、三重県で採取した罹病子実体から分離した。本病原菌は、ほだ木上で生育途上の子実体に感染すると、菌糸間隙で増殖し、シイタケ組織の褐変・溶解をひき起した。また、本菌株は低温下においても感染性を持ち、ほだ木の内樹皮および辺材外縁部に生育するシイタケ栄養菌糸に対しても感染力を持つことが認められた。このことは、本病害が栄養菌糸に沿って拡大しうることを示唆した。
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