研究概要 |
根粒形成に至る全過程を根粒の原基形成・原基定着・根粒形成等の過程に分解する解析的手法を導入して、畑土壌と人工バ-ミキュライトを対比しながら、インゲン窒素固定系の成立を抑制する土壌要因について検討した。 畑地土壌とバ-ミキュライトの理化学性を対比すると、畑地土壌では交換性Ca,Mg、特にMgが著しく少なく、逆に水溶性Ca,Mg量は著しく多く、硝酸態窒素も著しく多かった。粒径組成では、府中火山灰畑作土と比べてバ-ミキュライトは粒径の大きい方に偏っていた。畑土壌とバ-ミキュライトの間で播種後10日目までの根粒(原基)形成速度を比較すると畑地土壌で著しく小さく、その差は2次根で著しく、やや時間が経過した後の3次根での差よりも大きいことが明らかになった。また、条件によっては、一度形成された根粒原基や肥大過程にある根粒原基が時間経過とともに退行消滅することも明らかになった。 土壌へのマグネシウム添加実験により、土壌の交換性マグネシウム量が少ないこと、また水溶性マグネシウム量が多いことが土壌の根粒(原基)形成抑制要因ではないことが明らかになった。 土壌の硝酸態窒素を減少させると、土壌における根粒(原基)形成の抑制は部分的に解除されたが、土壌の持つ別の要因による抑制が残ると推察された。 畑土壌の粒径と根粒(原基)形成の関係を検討したが、両者の間には直線的な関係は見られなかった。また、バ-ミキュライトの粒径組成と同じになるように調整した畑作土でも抑制の完全な解除はみられなかった。しかし、孔隙率と化学性がそれぞれ著しく違う、畑土壌・バ-ミキュライト・パ-ライト間での比較から、畑地土壌での通気性の相対的低さが、生育初期の2次根の根粒形成を抑制する要因の一つとなっていると考えられた。
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