研究概要 |
(1)今回新たに単離した枯草菌胞子形成能欠損secA変異株(secA12)は50℃でも増殖可能であるが、胞子形成開始期の最も早い時期に、プロテインキナーゼをコードするkinA遺伝子の転写誘導が見られないばかりか通常kinA遺伝子の転写誘導の1時間後に見られるspoOA遺伝子のPsプロモーターからの転写誘導も観察されなかった。(2)kinA遺伝子の転写は胞子形成開始シグマ因子σ^Hを含むRNAポリメラーゼEσ^Hにより行われるが、このσ^Hは胞子形成開始期に安定化(活性化)されることが示唆されている。secA12株でσ^Hの安定化を抗σ^H抗体を用いて調べたところσ^Hの安定化が正常に起きていることが判明した。このことは,kinA遺伝子の転写にはEσ^Hプラスαの未知の転写補助因子が必要なのか,あるいはσ^Hの安定化とEσ^Hの形成が二段階で起こり,σ^HをRNAポリメラーゼのコアに結合させるステップにSecA蛋白質が直接もしくは関接に関与していることを示唆している。(3)secA12変異は変異株のDNAのサブクローニングを行いその塩基配列を野生株のものと比較したところsecA12表現型を与えるDNA断片の中で唯一N末から515番目のSer(TCA)→Leu(TTA)への一塩基置換であった。
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