大気中で日照量が十分なとき、高等植物の光合成量はCO_2固定反応が強く律速されている。この反応が遅い原因は主としてCO_2固定酵素であるリブロース1、5-ビスリン酸カルボキシラーゼ(RuBisCO)の酵素としての反応効率の低さにある。すなわち高等植物のRuBisCOの反応速度は一般の酵素の1/100 1/1000である。また、CO_2に対する基質親和力も低く、光合成を行っている緑黄体で本酵素は十分に作用していないことが明らかになっている。 本研究では高等植物のRuBisCOの示す履歴現象に着目し、フォールオーバーに関与するリジン残基を同定した。この残基がアルギニンとプロリンに変化している細菌型RuBisCOでは高等植物とは逆の活性上昇型履歴現象を呈した。この現象はDTTにより強く影響を受け、DTT濃度が低いほど活性上昇は大きくなり、逆に濃度が高いと野性型に近い活性となり、直線的に活性が変位した。この結果は、リジン残基によって起こされた高次構造の変化が、RuBisCOのS-S結合の形成によりその高次構造が保持され、このような履歴現象を呈するものと考えられた。
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