研究概要 |
PQQ(ピロロキノリンキノン)は当初、酸化還元酵素の補酵素として発見されたが、現在ではPQQに肝臓障害や白内障の予防作用があること、PQQのグレシン付加体であるOPQ(オキサゾピロロキノリン)に神経細胞増殖因子の分泌促進活性があることなどが報告され、生理・薬理学的にも注目されている化合物である。本研究はモノクローナル抗体を用いた酵素抗体法によるPQQ、OPQの微量高感度定量法の確立を目的として行った。 既に取得していた5つのPQQ特異的モノクローナル抗体のうち一つ(mAb2)は競合ELISAにおいて、本来の抗原であるPQQに対するIC_<50>は270nMであったがOPQに対しては3nMであり、これは他の11種類のPQQのアミノ酸付加体で最も低いものであった。一方、PQQを0.3MNH_4Cl,0.4%グリシン、100μMCaCl_2、pH8.3で1晩反応させると、加えたPQQのほとんどがOPQ化された。つまり、試料中のPQQをOPQ化し、その前後のOPQを定量することにより両者の高感度定量が可能となった。OPQの定量法としては現在のところ本法しか報告例はない。本法を用いていくつかの生体、食品試料中のPQQ、OPQを測定したところ、PQQに関してはこれまでの報告がかなりその濃度を高く評価し過ぎていること、発酵食品や血清中にもOPQが存在していることが判明した。ただし、生体試料中のPQQ、OPQを安定して正確に定量するためにはもう1桁感度をあげる必要があり、今後ABC法、PAP法による高感度化あるいはラジオイムノアッセイの導入を考えている。
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