研究概要 |
立木密度・土壌環境・林齢の異なるヒノキ人工林で雄花・種子・球果の生産量(個数・乾重)をリタートラップ法で測定し,比較検討した.花粉の生産量も調査した. 豊作年における主な結果は次の通りであった.(1)高齢林の場合,同じ土壌にある林分は立木密度が低いほど比例して雄花数は増加した.すなわち,Y-D効果が確認された.haあたり1本間伐すると,土壌に無関係に75×10^3個の雄花が増産され(花粉数では11×10^9粒),これは空中花粉の増加に直結する.一例として斜面上部の悪い土壌の高密度林分(2770本/ha)で間伐により1000本減ずると雄花生産は約30%増加すると見積もられた.斜面下部の成長良好な高密度林分(1736本/ha)で500本/ha(同30%)間伐すると15%の増加になる.また密度が同程度の林分であれば土壌環境が良くて成長の良い方が雄花生産は多かった.(2)若齢林の場合,土壌の良い林分の方が雄花生産は多いが,その違いは高齢林の時ほど大きくはなかった.(3)雌性部分の生産は土壌の良否とは無関係に一定であった.土壌が同程度であれば低密度の方が小差で多かった.雌性部分にはY-D効果は顕著に表れなかった. 凶作年においては以上の結果は認められず,林分間で無法則にバラバラの生産を示した.林齢と花粉生産量の関係においてもバラバラで,巨視的にみれば林齢に無関係に一定とみなせた.
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