1993年と1994年の10月に沖縄県西表島の網取湾とそれに隣接する崎山湾で、死滅サンゴの回復に伴う魚類群集の変化を調べた。網取湾のサンゴは1981年頃にオニヒトデの食害を受け、ほぼ完全に死滅したが、現在一部のサンゴ礁では回復途上にある。一方、崎山湾では95%以上のサンゴが生存している。そこで、網取湾からサンゴがまだ回復せず、サンゴ枝の構造的複雑性が非常に低いサンゴ礁(以後、死滅サンゴ礁と呼ぶ)と回復途上にあるサンゴ礁(1993年は被度で平均81%、1994年は平均94%のサンゴが生存しており、それぞれ81%回復サンゴ礁、94%回復サンゴ礁と呼ぶ)、および崎山湾からサンゴがほぼ完全に生存しているサンゴ礁(生存サンゴ礁と呼ぶ)を選出し、各サンゴ礁に1m×20mのトランセクトを5本設置し、魚類の種数と個体数を計数した。 81%回復サンゴ礁と94%回復サンゴ礁で観察した魚類の種数と個体数は、死滅サンゴ礁よりも著しく多く、生存サンゴ礁と同じであった。回復サンゴ礁では、死滅サンゴ礁に比べ、1)サンゴポリプ食魚、2)幼魚、3)成魚の定住魚、4)成魚の移動魚が、種数と個体数ともに著しく増加していたことがわかった。また、両回復サンゴ礁と生存サンゴ礁の間で、魚類の種組成もほとんど同じであった。 このように、サンゴが完全に回復しなくても、魚類群集はほぼもとの状態にまで回復することが判明した。
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