研究概要 |
全地球的な自然環境保全に関する意識の高まりのなかで,漁業資源の管理についてもこれまでの効率性を追究した技術展開は見直しを迫られ,現実的な生態系保全型管理手法の導入が要求されている。特に,漁獲後の船上投棄,及び漁具から脱出した個体について資源への影響把握が重要な課題となってきている。本研究は平成5年度から3年間の研究計画で実施されたもので,水槽内での基礎的な実験を中心に研究を進め,また,最終年度にはこれまでの研究成果を公表していくとともに,シンポジゥムを実施して国内外への問題提起と解決法提案を実施してきた。実験内容とその成果として,初年度には漁獲行為に遭遇した個体の受けるストレスについて既往の文献を総述し,生残性やストレスに関する研究方法の決定を実施した。そのなかで血漿中コルチゾル測定によるストレス判定を試み,マアジを実験魚としてトロールを想定した回流水槽実験を行った。2年目には延縄,刺し網を対象に水槽内で漁獲実験を行い,釣り漁具に比べて刺し網で受けるストレスは高く,また死亡する個体の多くなることを確認した。また,心電図計測の手法によって漁獲過程におけるリアルタイムでのストレス測定も実施した。3年度では,旋網の漁獲過程における魚体選別を目的とした網糸グレーダーの性能試験を実施した。実験魚としてマアジ,イサキを用い,水槽内で収納空間を狭めていった場合の網目通過行動を観察し,実際の操業での応用性について考察した。また,定置網における揚網時刻,揚網間隔と漁獲組成の解明に関する研究を実施し,魚群入網の日周性や蓄積性を魚種別に検討した。この問題は適正な操業時刻や操業方式を考える上で無駄のない資源利用方式を考えるための基礎として有用である。なお,マダイ種苗を実験魚として横臥行動の発現とストレスの関係について基礎的な実験も実施し,コルチゾル測定と心電図計測による解析をおこなった。実験成果として十分な資料入手には至らなかったが,今後の研究課題として重要な方向であり,引き続き取り組むことが必要である。以上,3年間の成果をまとめて報告書を印刷した。
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