研究概要 |
強力なNa^+チャンネル阻害剤を生産し麻痺性貝毒(PSP)の原因藻であるAlexandrium tamarenseおよびA.catenellaは、世界中に発生を拡大し大きな社会問題となっている。そのため発生の初期予察が重要であるが、本属の形態は酷似し変異も多いことから形態分類が困難であり、簡便で客観的な識別法が求められている。本研究は有毒渦鞭毛藻Alexandrium属の種間、種内ならびに有毒株を分子レベルで識別可能なDNAプローブを開発することを目的とし、以下のような研究成果が得られた。 (1)日本各地の沿岸から分離されたA.tamarenseおよびA.catenellaの無菌・クローン株を用いてPSP毒を抽出してHPLC蛍光分析を行ったところ、地域により毒組成に差異が認められたので毒タイプにより個体群をグル-ピングし、分子分類の基礎データを構築した。 (2)本藻各株の5.8SrDNAおよび内部スペーサー(ITSI,2)領域をPCR法により遺伝子増幅し、得られたDNA断片について制限酵素断片長解析を行った結果、本属藻類の種間識別が簡便に行えることが明らかになった。 (3)日本、タイおよび北米産のAlexandrium属6種24株の5.8SrDNAと内部スペーサー領域(約520bp)の塩基配列を決定し近隣結合法により分子系統樹を作成した。その結果、毒性の高いA.tamarenseと低いA.catenellaを明確に区別可能であり、また無毒種のA.affine,A.insuetumやA.pseudogonyaulaxともそれぞれ識別可能であった。 (4)ITS1の3'末端領域は、種特異的なマーカーとして有用であるので、有毒種のA.tamarenceとA.catenellaに特異的な2種の蛍光化DNAプローブを合成し、insituハイブリダイゼーションを行ったところ、種間識別が可能であることが明らかになった。従って有毒渦鞭毛藻の有毒性を識別可能なDNAプローブの開発が可能となった。
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