研究概要 |
本研究ではガン遺伝子を移入することによって,マダイから分離した白血球を不死化し,培養細胞株の樹立を試みた。また,マダイのイリドウイルスの培養の可能性も検討した。 ガン遺伝子発現プラスミドの作製は,ゲノムDNAのC‐fosを大腸菌に組み込んで行った。作製したガン遺伝子のC‐fosはトランスフェクタム法を用いて,細胞数が2.5×10^6cells/mlのマダイの末梢血白血球に移入した。また,ガン遺伝子を移入せずに同様の操作を行ったものを対照細胞とした。これらの細胞を20℃で培養し,細胞数を計数して30日間の生残率の推移を調べた。さらに,ガン遺伝子を移入して2日後に,MOIが0.001となるようにイリドウイルスを接種し,随時ウイルス力価を測定してウイルスの増殖性を調べた。また同時に,ウイルス接種細胞の電顕観察も行った。 生残率はC‐fos移入細胞では,培養25日後まで68.8〜82.5%の間で推移しており,培養30日後に56.1%であった。対照細胞では,培養3日後に80.6%で最高値を示したが,その後は徐々に低下し,培養20日後に50.9%,30日後に42.9%となった。ウイルスの増殖性は,C‐fos移入細胞でウイルス接種6時間後に3.051ogTCID_<50>/mlであったが,その後は徐々に低下する傾向を示し,接種7日後にウイルス力価は測定限界以下であった。また,対照細胞でも同様の傾向が認られた。電顕観察では,C‐fos移入細胞内にウイルスの感染が認められなかった。 以上のことから,ガン遺伝子の移入によってマダイの末梢血白血球は30日以上の培養が可能であることが明らかとなった。しかし,イリドウイルスの感染および増殖は認められなかった。この理由として,長期培養が可能になった細胞のほとんどがイリドウイルスに感受性のないリンパ球であるためだと考えられる。
|