研究概要 |
平成5・6年度の研究により以下の知見を得ることができた。すなわちイセエビ類を中心とする大型エビ類の染色体解析を行った結果、本邦産イセエビP.japonicus、米国ハワイ産イセエビ(P.marginatus)、インドネシア産イセエビ2種(P.homarus,P.longipes)、ニュージーランド産イセエビ(Jasus edwardsii)、および西アフリカ産イセエビ(J.lalandii)の計6種の染色体数並びに核型は、染色体数がそれぞれ 2n=112、118、150、110、142、136で、核型はそれぞれ38M+16SM+18ST+42A、88M+14SM+16A、64M+20SM+34ST+32A、38M+16SM+8ST+48A、50M+36SM+4ST+52A、100M+14ST+22Aであった。これら6種すべての染色体数並びに核型に種特異性が認められた。 世界各水域のイセエビ類の染色体に認められた種特異性から、染色体構造変異に基づく分化の道筋を解析した。各エビ類の染色体構造比較では、イデオグラムからは、染色体構造の差異を生じる構造変異について解析するとともに、各染色体の全腕長、短腕長、長腕長および腕比の比較により、構成染色体の分布に、種ごとに顕著な差があることが明らかとなった。 さらに、染色体内部の構造比較に有用な分染法について調査を行った結果、本邦産イセエビP.japonicusの染色体のAg-NOR's分染において、3対のM型染色体に濃染部が確認され分染による染色体構成解析の可能性が示唆された。 以上の研究成果は、2つの国際会議(Fourth International Workshop on Lobster(三陸町),Fifthth International Symposium Genetics in Aquaculture(Halifax,Canada))および2つに国内学会(平成6年度日本水産学会秋季大会(津市)、日本甲殻類学会第32回大会(福岡市)において、発表した。なお、これら知見については、近く関係学会誌に発表の予定である。
|