研究概要 |
東京湾で毎月漁獲され,市販品と同様に煮熟されたシャコから腹肉をとり,呈味を再現する抽出液調製法を検討したところ,エタノール法が最も優れ,ピクリン酸法がこれに次いだ。このエタノール抽出液について,遊離アミノ酸,アンモニウム塩基,ATP関連物質,無機イオンなどのエキス成分を分析した。得られた分析結果をもとに市販の試薬で合成エキスを調整したところ,シャコの呈味をよく再現していた。呈味の官能検査を用いてシャコの呈味有効成分を調べたところ,甘味,旨味,塩味,こく,海産物らしさとして,グリシン,アラニン,アルギニン,グルタミン酸,アデニル酸,ナトリウムイオン,塩素イオン,カリウムイオン,リン酸イオンの9成分が同定された。シャコの甘味にはグリシン,アラニン,アルギニン,アデニル酸などが寄与していたが,特にシャコにはグリシンが著量含まれ,シャコ特有の爽快な甘味に大きく寄与していた。冬季にシャコ腹肉のグリシン含量が高く,これが冬季にシャコの甘味が増す一因と考えられ,一方,夏季にはグリシン含量が低く,よって冬季に比べれば呈味が劣ると言われるものと考えられた。 シャコを水槽に入れ,人工海水を用いてその塩濃度を通常の34%より高くしたところ,シャコ体液の浸透圧と腹肉の浸透濃度が塩濃度に合わせて上昇した。反対に,水槽の塩濃度を34%より低くしたところ,同じく体液の浸透圧と腹肉の浸透濃度が塩濃度に合わせて減少した。このことから,シャコの呈味は,海水の塩濃度を増減させることにより調節することができると考えられた。 ショウジンガニ,アワビを異なる塩濃度の水槽に入れ,各々の筋肉のエキス成分と浸透濃度を調べたところ,高塩濃度側では浸透濃度が上昇したが,低塩濃度側ではこれが減少せずほぼ一定を保った。
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