研究概要 |
平成7年度は最終年度として,特に中山間地における耕作放棄農地の実態調査を行った。中山間地域おける農地は,農産物輸入の自由化の波をもろにかぶって,極めて厳しい状況におかれている。本研究では,まず労働生産性の小さな限界地に存在する農地の耕作放棄が進んでいる状況を把握し,次いでその要因を解明した。すなわち,傾斜,水利条件,道路条件等の物理的条件について検討し,これらが耕作放棄の主な要因となっていることを解明した。しかしながら,耕作放棄の少ない中山間地域も認められ,この要因としては適性作目の選定,営農の集団化,都市住民との交流などの,社会的要件の重要性を抽出することができた。 以上の知見をもとに,耕作放棄農地出現のメカニズムを明確にするとともに,都市周辺と中山間地域との相違を明確にしたうえで,耕作放棄を予防し,さらには再び耕作地とする方策,すなわち基盤整備(土地利用計画,圃場整備計画,道路計画,用排水計画等)を示すとともに,集落による農地管理のソフトな計画手法を提案した。 また,適性に利用管理された農地が水資源涵養・国土防災的機能を有していることが再確認され,耕作放棄がこうした諸機能についてマイナスの効果をもたらしている実態が明らかになり,その面から農地管理の重要性を明確化することができた。
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