研究概要 |
1.2年間の研究総括:『地域社会活性化効果』とは,「長期的な再生産の観点から地域社会の維持・継続に貢献する事業効果」を総称したものであり,農家後継者の定住促進(人の再生産),地域社会・組織の活性化(社会の再生産),地域資源の保全維持(資源の保全)の総合的かつ持続的な活性化としてとらえられる.整備の有無以外の立地条件が等しくなるように圃場整備グループと未整備グループを設定し,客観的な統計指標,農家アンケート調査結果を用いて両グループを比較した.その結果,未整備グループと比べて整備グループでは,農家世帯・農家人口・農業経営の永続性が顕著に高いと判定された(人の再生産).また,整備グループの方が作付無しや放棄地等が少なく,道路,用排水路等の維持管理が大幅に容易になったことが指摘された(資源の保全).更に圃場整備事業を契機に社会・組織活動の活性化がみられたことが確認できた(社会の再生産).以上により,「地域社会活性化効果」をおおむね実証できた. 2.政策的提言:今日,中山間地域は過疎化,高齢化をはじめ,きわめて厳しい状況下にあり,まさに地域崩壊の危機に直面しているといっても過言ではない.本研究によって,圃場整備事業が,そのような地域崩壊の動きに多少なりともブレーキをかけていることが明らかになった.つまり,「地域を守っていくためには,農家を説得し,あえて整備事業を積極的に推進するとともに,事業に対する合意形成を促進する施策,つまり,農業経営の低収益性を鑑みて農家の自己負担分を十分小さくする施策を導入すべきこと」を本研究の結論は強く示唆しているのである.
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