研究概要 |
研究の目的は、,感潮河川や浅海の「水環境」における水質形成の支配要因となる淡・塩水密度流の成層輸送と底質浮上現象との運動・力学的機構を解明し、水質改善及び保全対策を具体的に検討することにある。 (1)潮汐波による感潮河川密度流模型の実験的研究 潮汐起波装置に接続した河川水路部(幅20cm,高さ30cm,長さ8m)に淡・塩水の2成層流を発生させ,潮汐流による経時的な成層過程(2層の厚さ,流速,流向の各変化の組み合せ)の形成パターンを識別し、底質浮上を起す掃流力に関わる流速・密度分布等の水理量を計測した。 これらの実験の流況は,現実の河口から防潮水門等までの感潮流況を再現する緩混合型の2成層流であり,収集データの整理検討から得た知見は下記の一連の成果と連携する。 (2)2成層密度流に関する解析理論とその展望 感潮河川における水門・堰や浅瀬を越流する密度流の現象は,筑後川や肱川の現実課題であり,特に,非定常流の解析理論は未解明である。 そこで,最新の文献資料調査から得た解析理論を3種類に区分し,当該流況に対する解析手法の展望を明らかにした研究成果を得た。 (3)現地観測に基づく強混合型密度流の解析 一方,強混合型の感潮河川密度流は,経時的な流況変化が著しく,遷移過程の水理特性を客観的に識別する必要がある。これに対して新たに「安定 Froude数」を導入する手法を提案し,その有効性を現地観測データに基づいて検証した研究成果を得た。 (4)閉鎖性浅海湾の現地調査研究 魚類養殖水域における現地調査を継続すると共に,これまでに実施した観測結果を総合して,水質形成に関わる流速等の水理量と,貧酸素水塊の発生に寄与する底質浮上の実態を究明した。
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