研究概要 |
北東北及びドイツアルプスの高標高地から収集し、特性評価試験に供試した系統数はペレニアルライグラス28系統、オ-チャードグラス13系統、トールフェスク6系統、チモシー8系統の合計55系統である。 調査は平成6年の春から開始し、年間2回刈の採草型管理の下で主として一般農業形質の調査を行った。平成7年度は、最終年であるために採種性及び収量調査も行い、更に採取した試料について消化性、葉部構造形質、ミネラル含有率、水中における葉部横断面からのミネラルの遊離割合を調査した。 ペレニアルライグラスの供試系統の特性を主成分分析した結果、岩手県、福島県、長野県の生態型の第1群,栃木県の生態型の第2群,ドイツの生態型群,ドイツの流通品種群,フランスの生態型の5群に分かれた.日本の第1群は大型で晩生の特徴を持つのに対し、第2群はやや小型で出穂期もやや早い特徴を示した.ドイツの流通品種群は日本の第1群と第2群の中間の特徴を示したが,ドイツの生態型は小型で早生,越冬性,生存率が高く,穂が小型で多い特徴を示した.ドイツアルプスの生態型は東北地方の高標高地に適した品種育成のための育種素材として貴重な特性をもつと考えられた. ペレニアルライグラスの葉部構造形質における日本とドイツアルプスのエコタイプの特性には多くの形質で差が認められ,日本の系統の葉部構造形質が大型であった.しかし、消化性の遺伝子型間の差は大きくないことから,消化性の重要性は低いと考えられた. 3草種について、水中における牧草組織からのミネラルの遊離程度を調べた結果,Kが最も高く,Cl,Ca,Pが続いた.P,S,Mgは遊離割合が低い元素であり,Siはほとんど遊離しなかった.また,品種系統間での遊離のし易さに対する明瞭な差は認められなかった.
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