研究概要 |
牛毛をチオグリコール酸により還元的分解して得られた可溶化生成物について、SDS-ポリアクリルアミゲグル電気泳動を行ない、その成分の分子量を検討した。その結果、低イオウ画分として70キロダルトン(KDa),60KDa,50KDa,45KDaの成分.高イオン画分として40KDaと25KDaの成分の存在することが明らかとなった。先に牛毛可溶化生成物を抗原として得られた単クローン抗体(MAb)の作製に成功したが、このMAbは牛毛可溶化生成物の内、高イオウ画分には全く反応せず、低イオウ画分の60KDa,50KDa,45KDaの成分と反応することが明らかとなった。低イオウ画分の70KDa成分には、このMAbに対する反応性は検出されなかった。この抗体を用いて免疫組織化学的手法により牛皮膚を検索したところ、毛を構成するトリコサイト及び毛乞の外根鞘細胞の一部に陽性反応が観察され、他の上皮細胞はすべて陰性であった。このことから、上皮系組織に広く存在するケラチンの中に毛に特異的に存在する成分の存在が明らかとなった。さらにウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ毛よりケラチン成分をインタクトな条件で抽出しその成分を検討したところ、分子量は45KDa〜60KDaであり、表皮ケラチンよりやや低い分子量を示し、ウエスタンブロッティングにより各動物毛において免疫化学的に共通する成分の存在することが明らかとなった。免疫組織化学的検索によっても各動物組織内の毛、トリコサイト外鞘根の一部が陽性となり、生化学的データが裏付けられた。
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