研究概要 |
1.ホルスタイン種去勢肥育牛を肥育している農家2軒(A,B)の牛舎,肥育計画,飼料組成,肥育環境,出荷牛の枝肉格付における各種の評価について調査した.肥育成績は,A農家よりもB農家の方が良好であった.この相違は,牛舎の構造,きめ細かな検討された飼料組成と給与方法などの差に起因すると考えられた. 2.肉質等級決定用の7項目の評価を個体毎に抽出し,これらの中の2項目間の関連性を知るために,Goodman-Kuruskalのγなどの各種の順位相関係数を求めた.これらの係数を基にした解析から,A農家の場合は,多くの項目間で強い関連性が認められた.このことからA農家の肉質を向上させるためには,単に肥育条件の飼料組成の改善のみで解決できるものではなく,牛舎構造等を含めたすべての管理体系で多くの改善が必要と考えられた.B農家の場合は,「脂肪交雑」「きめ」「締まり」間の関連性が強く,いずれかを向上させることによって肉質等級が向上すると考えられた.この解析法は,肉質向上法の策定のために有効であると考えられた. 3.胸最長筋の脂質の脂肪酸組成を分析し,脂肪酸組成と枝肉の肉質等級との関連性を判別分析によって解析した.肉質等級を3以上と未満との2群に分けて,全脂質の脂肪酸組成で判別したところ,正判別率は61および78%であった.このことから,脂肪酸組成は肉質評価と関連性があると判断された. 4.肥育中の53頭から血液を採取し,血清中の全脂質の脂肪酸組成を分析した.肉質等級を上と同様に2群に分類し,脂肪酸組成のみで判別分析したところ,16ヵ月齢において両群とも約75%以上の正判別率であった.このことは血液中の脂肪酸組成の測定によって,肥育中に肉質等級が予測出来ることを示唆していた. 5.枝肉格付結果の解析および脂肪酸組成の分析から,ホルスタイン種去勢牛の肥育方法の分析と効率的な方法について考察した.
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