研究概要 |
体外成熟・体外受精されたウシ卵子の体外発生(胚盤胞期への発生)に及ぼす種々の細胞成長因子の効果について検討した。 (実験I)ヒトleukemia inhibitory factor(hLIF)の効果 合成卵管液(Synthetic oviduct fluid medium:SOFM)に,血清(ヒト血清:10%HS),ウシ血清アルブミン(1.5%BSA)またはポリビニール・アルコール(0.1%PVA)含有の培養液を用いて,1細胞期,4,8細胞期,桑実胚および初期胚盤胞が拡張胚盤胞または脱出胚盤法へ発育する効果を検討した。その結果,血清含有のSOFMでは500〜6,000U/mlのhLIF添加した効果は認められなかったが,BSAまたはPVA含有のSOFMでは5,000U/ml hLIFの添加は桑実胚および初期胚盤胞の発生を有意に促進した。 (実験II)種々の細胞成長因子の効果 2,8細胞期,桑実胚および初期胚盤胞の拡張または脱出胚盤胞への発生に及ぼす4種(bFGF,EGF,IGF,TGFβ1)の細胞成長因子の効果を検討した。なお,対照区として血清(HS)添加SOFMおよびSOFM+PVA(0.1%)を設け,細胞成長因子はすべてSOFM+PVAに添加した。その結果,SOFM+HS区の拡張胚盤胞への発生率は2,4細胞期,桑実胚,初期胚盤胞で各々37,37,80,93%であった。SOFM+PVA+細胞成長因子添加区は桑実胚および初期胚盤胞において細胞成長因子無添加区(SOFM+PVA)より高い発生率を示したが,2および8細胞期についてはその効果は認められなかった。以上の結果より,hLIFおよびその他の細胞成長因子の効果は胚の発育ステージおよび培養液中の血清添加の有無によって異なることが示唆された。
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