研究概要 |
顆粒性間膜線(GMG)細胞は妊娠子宮で有意にみられるナチュラルキラー(NK)細胞サブセットである。本研究では、GMG細胞のVLA‐インテグリンファミリーの細胞外基質(ECM)レセプターを免疫組織学的に検索した。妊娠3日と6日(前着床期)では、GMG細胞は未熟で形態学的に他のリンパ球と判別が困難なためmAb LGL‐1で同定した後で、VLA抗体による二重染色をした。妊娠8日以降はGMG細胞は形態学的に容易に同定できる。 1.妊娠3日と6日では、LGL‐1陽性細胞(GMG前駆細胞)はVLA‐beta1,-alpha1,-alpha3,-alpha4,-alpha5,-alpha6鎖を持っていた。妊娠8日から15日まで、GMG細胞はVLA‐beta1,-alpha4,-alpha5鎖を持っていたが、VLA‐alpha1,-alpha3,-alpha6鎖は持たなかった。すなわち、妊娠6日から8日にかけて(着床期)、GMG細胞膜分子のうちVLA‐alpha1,-alpha3,-alpha6鎖が消失している。これらはECMレセプターのうちコラーゲン、ラミニンレセプターに変化が起きたことを示唆する。。一方、フィブロネクチンレセプターであるVLA‐a4,‐a5鎖は変化しなかった。 2.培養実験で、GMG細胞はECM欠如では2日で死亡したが、ECM上では少なくとも2週間生存した。特にフィブロネクチンとの共培養はGMG細胞を伸張させた。この形態はin vivoでGMG細胞が血管内皮間を通過する形態に酷似している。しかし、本培養実験で用いたGMG細胞は妊娠8日以降のもなので、これ以前の標本での培養が必要である。 一連の成績はGMG細胞とECMとの相互関係の存在を示し、着床期にGMG細胞の膜分子が変化することによって、この細胞の性格が変化することを示唆する。
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