研究概要 |
ウシ白血球粘着不全症牛(BLAD)の病態とDNA診断に関する研究を実施し下記の結果を得た。 1.好中球機能の解析-BLADの好中球膜上に接着分子CD18が欠損していることを認め,好中球の付着性,走化性,貧食性,化学発光反応および酸素代謝能は意に低下していることを明らかにした。1gG-Fc受容体の代償的発現をBLADの好中球で認めた。BLADの病態は,好中球CR3を介する機能不全とよく合致し,臨床像,臨床病理学ならびに形態学的な特徴所見を示すことを認めた。 2.単核球の機能解析-BLAD牛の単核球(リンパ球・単球)には、明らかにCD18が欠損しており,リンパ球のT,B-比および幼若化能などの機能には正常牛との間に有意差を認めなかった。免疫グロブリン(1gG,M,A)は有意な増加を示した。単球の付着性とCR3を介する貧食性が有意に低下していることを明らかにした。 3.骨髄機能の検索-BLAD牛の骨髄中有核細胞数は、正常のそれの2.9〜8.8倍増加していた。M:E比は、2.4〜12であり著増していた。電顕による好中球の観察では,“偽足"の形成が乏しく,球状を呈していた。 4.BLAD牛およびキャリヤ-牛のDNA-PCR法による診断-BLAD牛8頭およびホルスタイン乳牛260頭を対象に、DNA診断を実施した。BLAD牛は、DNA-PCRで特有の制限酵素切断パターンを示した。キャリヤ-牛の頻度は、10%(26/260)に検出され、牛群で2.6-15.2%、年齢で2〜10万に分布していた。キャリヤ-牛の野外での分布を,国内で初めて明らかにした。 以上の研究から、BLADの病態と本疾患(遺伝病)を起こす不良遺伝子(BLAD、BLAD-キャリヤ-)保有牛の診断が可能となった。雌側のキャリヤ-率は、約10%であった。我国におけるBLADの制圧モデルに貢献した。
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