研究概要 |
本研究から次の点が明らかとなつた。 1.MC101抗原について (1)本抗原は精子頭部の前先体部皮質部分に局在する。(2)分子量約155,000ダルトン(155K蛋白)である本抗原の抗原性は、精巣上体通過中に増強するが分子サイズに顕著な変化は起こらない。(3)MC101抗体(IgG_1)は155K蛋白のタンパク性の部分を特異的に認識する。(4)155Kバンド付近に糖蛋白が密集している為、155K蛋白が糖蛋白であるかどうかは決めることできなかった。(5)本抗原は、先体反応過程において精子細胞膜と先体外膜で形成されるハイブリツド膜に近接して挙動する。(6)受精率への影響については確定的な結果を得られなかった。 2.MC31抗原について pre-およびpost-meioticの時期を通して挙動を追跡できた。本抗原はpre-meioticの時期である精母細胞のゴルジ装置に一旦認められた後に、post-meioticの時期である精子細胞の中期(step 9-10)のゴルジ装置でも強く発現されるようになる。現在、この時期に発現している遺伝子産物との関係を検索している。 3.先体内物質MN9およびMC41抗原について 先体形成過程における輸送経路については詳細に観察できたが、エルトリエーターによる精細胞分離とBrefekdin Aを用いた種々のin vitro培養実験では、現在のところ、本目的のために必要な微細構造の保存に満足すべき結果が出ていない。 4.T21抗原について 本抗原と精子成熟および抗原隠蔽や免疫逃避現象との関係について検索を進めた。本抗原は、女性生殖管内通過中に抗原隠蔽度を減少させながら脱落するかエピトープ部分のコンフォメーションに変化が起こる可能性があることが判明した。
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