研究概要 |
報告者等はHarder腺の中に細胞成長因子が存在することを発見し,Harder腺由来細胞成長因子(HGDGF)と命名した.平成6年度の本助成により,神経細胞の増殖・分化がHGDGFによって促されることを見いだした.その効果は他の成長因子(繊維芽細胞成長因子=FG等)によって,さらに刺激された.また,細胞表面の成長因子受容体と結合して成長因子の活性を抑制するシュラミンを投与すると,FGの効果は完全に抑制されるものの,HGDGFの作用は50%程度軽減されるのみであった.よって,細胞増殖・分化のシグナルの経路は成長因子によって異なり,神経細胞のHGDGF受容体はFGのそれと異なるものと考えられた.更に,HGDGFは網膜の色素上皮細胞と神経細胞の分化・増殖を促す.両単離細胞の混在培養では,本因子投与によって細胞極性が見られ,色素上皮細胞上に神経細胞が移動した.この結果は本因子が網膜の再構成に関与することを示唆するものである. 本助成の目的を遂行する過程で,鳥類と哺乳類(ウサギ)のHarder腺の微細構造について比較解剖学的に検討した.鳥類では腺の中に多量の形質細胞を有し,局所免疫器官として,哺乳類では細胞成長因子を含有し,化学的物質として,眼球周囲の損傷・治癒に関与するものと考えられた.
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