研究概要 |
粘膜筋板における運動抑制機構を解明するため、モルモット近位結腸を用いて実験的研究を行い、以下のような成績を得た。 1)粘膜筋板の条片標本を恒温槽内で灌流し、アトロピン存在下で電気的に壁内神経叢を刺激した際、低周波領域の刺激で自発性収縮が抑制された。 2)この抑制は、propranorolおよびphentolamineの同時適用によって完全には阻害されなかったが、TTXによって消失した。したがって、この抑制には、非コリン.非アドレナリン作動性神経が関与していることが明らかとなった。 3)免疫組織化学的研究により、本組織には、tachykinins,somatostatin,NPY,galanin,CGRPを含む神経が分布していた。しかし、VIP,m-ENK,CCKを含有する神経は分布していなかった。 4)上記の神経ペプチドのうち、CGRPのみが強い運動抑制効果を有していた。この抑制効果は、TTXによって影響を受けなかったので、粘膜筋板に対する直接効果であると思われる。 5)ノルアドレナリンは、粘膜筋板の自発運動を完全に抑制したが、この抑制はpropranorolによっては阻止されず、phentolamineによって阻止されたので、α-受容体を介した反応と考えられた。 6)その他、セロトニンならびにATPは本組織の収縮を抑制したが、ヒスタミンは促進した。 7)以上の結果より、本組織の運動抑制にはアドレナリン作動性神経およびCGRP含有神経が関与することが強く示唆された。また、本組織はセロトニン作動性神経、プリン作動性神経の関与も考えられた。
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