研究概要 |
静止状態の骨格筋細胞内遊離Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]_i)を定量する目的で、蛙骨格筋単一筋繊維に高分子dextranと結合した蛍光Ca^<2+>指示薬fura-2(fura dextran、分子量薬10,000)を注入し、筋細胞からの蛍光と収縮張力を同時に測定した(17°C)。細胞内指示薬の蛍光を([Ca^<2+>]_iとして)較正するために、筋繊維の細胞膜をβ-escinで30-35分処理し、細胞膜の低分子に対する透過性を高めた。この処理により、細胞膜はCa^<2+>やATPなどの小さな分子を透過するが、分子量薬10,000のfura dextranの細胞からの漏出は非常に時間経過で遅かった。また、細胞内蛋白(分子量14,000-80,000)の細胞外への漏出は非常にわずかであることが、細胞外液サンプルのSDS-PAGEにより明らかとなった。そこでβ-escin処理筋の細胞外液の[Ca^<2+>]を変えてfura dextran蛍光を測定することにより、細胞内で蛍光の較正パラメータを得ることができた。細胞外の[Ca^<2+>]濃度をpCa>9からpCa7-4へとステップ状に上げていくと、細胞内fura dextranの蛍光は速やかに変化し、定常状態に達した。各[Ca^<2+>]濃度での蛍光強度から指示薬の解離定数を見積もると薬1.0μMであった。解離定数を求める第二の方法として、単収縮中のfura dextran蛍光変化を測定し、その大きさと時間経過を別の方法で測定したCa transient によりあてはめる方法を用いると、解離定数は 2.1μMと見積もられた。このように細胞内での解離定数(1.0〜2.1μM)はキュベット内の溶液中で得られた値(0.52μM)に比べて2-4倍高い値であった。細胞内で得た較正パラメータをもちいて、骨格筋細胞内[Ca^<2+>]濃度を計算すると、55-115nMであった。
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