研究概要 |
我々の開発した生物時計のコロニーレベルでの自動測定法と発光らん藻の実験系の利点を活かし、予想以上の成果を挙げることが出来た。要点は以下の4点である。 らん藻の生物時計突然変異体を分離 冷却CCDカメラ、寒天培地上のらん藻のコロニーが液体培養と同様なリズムを示すことを確認し,生物時計研究者の長年の夢であった「コロニーでの生物時計」を実現した(J.Bacteri.ol.,1994)。この装置の自動化成功により同時6,000クローンのサーカディアンリズムの自動測定が可能になり、これまで莫大な時間と労力を要した生物時計の突然変異体の分離を実現的なものとした。すでにこの実験系を利用し150,000クローンをスクリーニングし、これまで他の生物で得られているものに比べはるかに多様な、20種の生物時計の突然変異体を分離することに成功した(PNAS発表予定)。この成果は3つの国際学会(Gordon conference等)で発表し高い評価をうることが出来た。 生物時計突然遺伝子のクローニング 現在野生型DNAによる遺伝的相補によりこれらの突然変異遺伝子のクローニングを試みており、らん藻のゲノムが小さいこと、CCDカメラによるスクリーニングが容易なことを利用し、すでにいくつかの生物時計遺伝子のクローニングに成功している。引き続き他の突然変異遺伝子のクローニングを行ないその機能の解析を目指す。 生物時計により制御をうける遺伝子 生物時計により制御をうける遺伝子を網羅的に得ることを試みた。まずゲノムのランダムな小断片にルシフェラーゼ遺伝子をリンクさせ、らん藻に導入することでプロモータのライブラリを作製した。これまでに冷却CCDカメラによるコロニー測定法により、30,000コロニーをスクリーニングし約1000個の発光クローンを得た。そのリズムを検定したところ多くのクローンが様々な位相でリズムを示すことが見いだされ、生物時計による発現制御をうける遺伝子のライブラリを得ることが出来た。これは今後の解析の出発材料となる。 Synechocistis 6803の生物発光リズム 他種のらん藻Synechocistis 6803からも生物発光リズムの測定に成功し、らん藻の生物時計について比較検討することを可能にした。
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