研究概要 |
タキキニンと神経変性との関連を明らかにするための基礎的実験として,中枢タキキニン受容体の特性を調べた。 1.電気生理学的実験:新生ラット摘出脊髄標本において下降性線維を刺激すると運動ニューロンに緩徐な脱分極が記録された.この脱分極はNK-1拮抗薬により一部が抑制されたことから,タキキニンが下降性脱分極に関与していることが示唆された. 2.テトロドトキシン存在下に新生ラット摘出脊髄標本にタキキニンを適用し、前根より脱分極を記録し用量反応曲線を得、これに対する拮抗薬の効果を定量的に求めた。末梢組織標本と異なり、NK-1拮抗薬はニューロキニンA(NKA)による応答に対しより高い親和性を示した。一方サブスタンスP(SP)による反応は高濃度においては却って拮抗薬存在下で増強された。 3.生化学的分析:NKAによるアセチルコリン放出はNK-1拮抗薬によって抑制され、一方SPによる放出は抑制されなかった。これは電気生理の結果とよく一致し、以上より脊髄においてNKAに感受性の高いNK-1受容体サブタイプの存在が示唆された。 4.遺伝子クローニング:脊髄において特異的なサブタイプが存在することが電気生理・生化学的実験から示唆されたので、RT-PCRを用いた遺伝子クローニングを行なった。得られたDNA断片はほとんどがNK-1とNK-3で、NK-2は少量であった。新しいサブタイプはまだ見いだせていない。 5.大脳初代培養系による検討:生後3-4日のラットの大脳皮質神経細胞を単離し、グリア細胞をフィーダーとして数週間培養した。この初代培養系を用いてパッチクランプ法でタキキニンの作用を観察したが、明らかな応答は得られなかった。
|