研究概要 |
平滑筋スキンド標本を用いた解析系でGTP依存性のCa感受性の亢進がrho蛋白質の特異的ADPリボシル化酵素であるC3酵素によって阻害されることから、rho蛋白質を介するMLCPの活性調節の可能性が考えられた。そこで今回、非筋細胞ホモジネートを用いて無細胞系で解析した。予め[^<32>P]ATPでリン酸化した砂嚢筋ミオシン軽鎖を基質として、ラット脳、Swiss3T3線維芽細胞、血小板ホモジネートを用いて検討した。1mM以上のGTP,GDPの添加はMLCP活性の低下をもたらしたが、これ以下の濃度では明らかな活性変化は観察されなかった。rho蛋白質ならびに他のGTP結合蛋白質のKd値(10-50nM)を考慮すると要求するヌクレオチドが高濃度であること、両者の効果に差が認められないことから非特異的抑制であると考えられた。次に予めGTPあるいはGDPと結合させたrho蛋白質を添加し検討したがMLCP活性の変化は検出されなかった。以上の結果からrho蛋白質がMLCPの活性を直接担っている可能性は少ないと結論された。 そこで培養Swiss3T3細胞をもちいてrho蛋白質の関与する蛋白質リン酸化調節について検討した。C3酵素の存在下で培養したSwiss3T3細胞(C3酵素処理細胞)と非処理細胞を調製し、rho蛋白質の活性化刺激因子であることが報告されているLysophosphatidic acid(LPA)で刺激した。今回、C3酵素処理によるチロシンリン酸化の変化を解析した。LPA刺激により増強するチロシンリン酸化蛋白質のうち分子量130-110K,88K,72K,43Kの蛋白質(群)のリン酸化がC3酵素処理で減弱した。これらの蛋白質のうちp130-110の1つはfocal adhesionキナーゼ(FAK)であり、p43KはMAPキナーゼ(ERK2)であることが判明した。また、C3酵素処理細胞では抗PI3キナーゼp85抗体で共沈する180Kのチロシンリン酸化蛋白質バンドの減弱とLPAによるPI3キナーゼの活性化の阻害が認められた。これより、刺激因子→膜受容体・G蛋白質→rho蛋白質→チロシンキナーゼの情報伝達系の存在が示唆された。
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