研究概要 |
パラミクスウイルスはRNAウイルスであり,エンベロープを有しているが,エンベロープに局在する膜融合活性をもつ糖蛋白質Fが本ウイルスの動物細胞への感染に重要な役割を果している。F蛋白質は宿主動物細胞の結合型ポリゾームで膜融合活性のない前駆体蛋白質F_oとして生合成される。本ウイルスはプロテアーゼの遺伝子を有していないので,F_oは宿主細胞内のプロテアーゼの作用を受けて膜融合能を有するF_1+F_2のヘテロニ量体を形成する。我々は,パラミクソウイルスの一種であるニューカッスル病ウイルス(NDV)のF蛋白質の生合成と細胞内プロセシング,ウイルス粒子形成と動物細胞への感染の機構に宿主細胞内のトランスゴルジ膜でのプロセシングプロテアーゼによる活性化が関与していることを明らかにした。 NDVには強毒株(Miyadera等)と弱毒株(D26)があるが夫々のF_oのプロセッシングプロテアーゼによる切断点のアミノ酸配列は,強毒株ではArg-Gin-Arg-Argのカルボキシル側であり,弱毒株ではArg-Gln-Gly-Argのカルボキシル側である。前者はトランスゴジル膜のプロテアーゼで切断され,後者は細胞膜表面で切断される。 一方,オルトミクソウイルスの一種であるインフルエンザウイルスにおいては,エンベローブに局在するヘマグルチニン(HA)が膜融合活性を有するがNDVのFと同様に宿主細胞内で活性化される。我々は,HAもFと同じ宿主細胞内のオルガネラで活性化が起こることを明らかにした。 次に,ラット肝よりトランスゴルジ膜を調製して,膜結合性のプロセシングプロテアーゼを可溶化,精製した。F_o活性化酵素3種類が見出され,そのうち1つはfurinであったが,F_o活性化を最も強く起こすプロテアーゼはCa依存性のセリンプロテアーゼであったが,furinとは異なる新しいプロテアーゼであった。
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