研究概要 |
我々は特定のガングリオシドが,骨髄球系の白血病細胞株並びに新鮮白血病細胞を終末分化細胞に分化誘導し、その増殖を抑制することを見いだしてきた。その結果、顆粒球系分化誘導能を持つネオラクト系ガングリオシドの生合成にはLc3Cer合成酵素(beta1→3N-アセチルグルコサミン転移酵素)が、そして単球系分化誘導能を持つGM3の生合成にはGM3合成酵素(alpha2→3シアル酸転移酵素)がキーエンザイムとなっていることが明かとなった(Nakamura.M.et al,J.Biol,Chem.1992)。この2つのキーエンザイムの遺伝子活性化及び制御機構を解明することが重要であることが判明したが、本研究では、これら2つの糖転移酵素蛋白をコードするcDNAのクローニングをめざした。 まず、Lc3Cer合成酵素については、GlcNAcbeta1→3Galを特異的に認識する単クローン性抗体HF12を調製した。その性質を解析し、とくに細胞接着現象との関わりでGlcNAcbeta1→3Ga1の末端糖鎖を持つLc3Cerが特徴的に発現していることを見いだした。現在本抗体を用いてLc3Cer合成酵素の発現クローニングに着手しているところである。次いでGM3合成酵素については、今までにクローニングされているシアル酸転移酵素遺伝子の150bp程度の局所的ホモロジーから、PCR法およびプラークハイブリダイゼーション法を用いて、1つの全長cDNAと思れるクローンをとった。現在その過剰発現系を構築して、GM3合成酵素との異同並びに触媒する酵素反応の詳細につき解析中である。
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