研究課題/領域番号 |
05670156
|
研究種目 |
一般研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
病態医化学
|
研究機関 | (財)大阪バイオサイエンス研究所 |
研究代表者 |
渡部 紀久子 (渡辺 紀久子) 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究員 (90211672)
|
研究分担者 |
鈴木 登志子 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究助手
遠藤 和夫 京都大学, 大学院博士課程
早石 修 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 所長 (40025507)
福井 基成 京都大学, 医学部, 医員
|
研究期間 (年度) |
1993 – 1995
|
研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
|
配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1995年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
1994年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1993年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
|
キーワード | プロスタグランジン(PG)F / PGF合成酵素 / 肺 / 間質細胞 / 低酸素 / 子宮 / プロスタグランジンF / プロスタグランジン / 酵素学 / 遺伝子操作 / 部位特異的変異 / 活性部位 / アルド・ケト還元酵素 / 多機能酵素 |
研究概要 |
プロスタグランジン(PG)F合成酵素は、322個のアミノ酸からなる分子量36,517の単一鎖の単純蛋白質で、NADPH存在下に一つの活性部位でPGH_2からPGF_<2α>を、他の活性部位でPGD_2から9α,11β-PGF_2を生成するいわゆるdual function enzymeであり、肺血管の攣縮や子宮筋の収縮など多彩な生理活性を惹起するPGF_2の合成に関与する酵素である。本酵素の多機能性は本酵素と一次構造上高い相似性を示したアルド・ケト還元酵素群の酵素を持つこと、また肺PGF合成酵素のアイソザイムが肝臓に存在しそのアイソザイムも多機能性を示すことから、多機能酵素は生体内の様々な臓器に広く存在し、臓器により異なる生理的役割を担うことが考えられる。このような多機能酵素の構造や機能を解明するため、PGF合成酵素を酵素学的、蛋白化学的、免疫化学的に研究し、平成5年度から7年度の研究期間で以下のことを明らかにした。 1.PGF合成酵素の構造の解明 (a)部位特異的変異 (i)H48L変異体 本来の酵素とは異なり酵素反応中、急速に失活する (ii)Y55F変異体 PGD還元活性およびPGH還元活性は共に測定限界以下であった。 (iii)H117N変異体 PGD還元活性は失活し、PGH還元活性は17%残った。 (b)C末端側アミノ酸残基の役割 (i)C末端側7残基の削除 PGD還元活性は80%低下し、PGH還元活性は20%しか低下しなかった。 (ii)C末端側15残基の削除 PGD還元活性、PGH還元活性ともに約95%失活した。 55TyrはPGD及びPGHの触媒中心と考えられ、117HisもPGDの触媒中心近傍に存在すると考えられる。 48Hisは活性部位に関与すると思われる。また、H117N変異体及びC末端側7残基の削除の結果からPGDとPGHの結合部位は異なることが示唆され、C末端側アミノ酸残基は両活性部位の構造保持に重要な役割を果たしていると考えられる。 2.PGF合成酵素の機能の解明 PGF合成酵素はラットを用いて全身臓器分布を調べた結果、肺に最も高い活性を示した。本酵素は肺において免疫組織学的研究より細胞中隔および非線毛気道上皮細胞に存在することが明らかになった。今回更に細胞中隔細胞が間質細胞のひとつで、線維芽細胞と筋細胞の両方の形態を有する収縮性間質細胞contractile interstitial cells(CICs)であることを免疫蛍光染色および免疫電顕により証明した。共同研究者の福井基成博士等(京都大学)はこの細胞の分離培養に成功した。本細胞をコラーゲンゲル中で培養し、低酸素状態にしたときゲルが急速に収縮することから、PGFはこの状態時の収縮に関与していると考えられ、本酵素が肺におけるPGF合成を司る酵素と思われる。 PGFは黄体の性周期の後期に子宮内膜において多く生成され、性周期の調節や妊娠に関与すると考えられている。伊藤誠二教授(関西医科大学)との共同研究により妊娠後期および性周期の後期の子宮においてPGF合成酵素の抗体と交差する36KDaの蛋白質が増加し、それと呼応してPGF_<2α>も増加することを見いだした。この結果よりPGFが性周期の調節や妊娠時に重要な生理的役割を果たし、PGF合成酵素もその生成に関与していると思われる。
|