研究概要 |
この研究は、HTLV-1 proviral DNAのin situ hybridization (ISH)用のプローブをpolymerase chain reaction (PCR)で作成し、ISHによるHTLV-1 proviral DNAとそのシグナルの検出を試み、HTLV-1関連疾患での病変におけるヒト特定遺伝子の活性化を同様の方法で検出しHTLV-1 proviral DNAのシグナルとの相関を検討することを目的に実施された。PCRで、LTR,GAG,POL,ENV,PXTax,pX,RexのISH用プローブは作成出来た。ISHでは、シグナルの検出は出来たがHTLV-1 proviral DNA自体の検出は出来なかった。悪性リンパ腫でのHTLV-1 proviral DNAのシグナルの検討は、低悪性度のT細胞性リンパやその他のリンパ腫にもHTLV-1シグナル陽性例を認め、Adult T-cell leukemia/lymphoma (ATLL)以外のHTLV-1関連リンパ腫の存在とATLLの先行病変と考えられる低悪性度T細胞性リンパ腫でのHTLV-1の活性化が示唆された。症例検討でも同様の所見が認められた。吉田光昭らの仮説に従いHTLV-1のヒト遺伝子に対するtransacrivatorとして作用はp40taxの機能であるとして。抗原回復免疫組織化学で、p40taxのHTLV-1感染細胞での局在を検討し、HTLV-1pX Taxのシグナルの検出との相関を検討した。p40taxは、主に細胞質と少数例で核に認められ、ISHによるpX Taxのシグナルの検出とほぼ相関した。更に、高感度免疫化学の導入により、極微量の核内p40taxも検出することが可能であった。近年の分子生物学的研究が指摘するように、p40taxが細胞質と核に存在することは、p40taxの多様な生理活性を示唆し、HTLV-1proviralDNAとヒト特定遺伝子の活性化のISHによる比較ではHTLV-1のtransactivator機能の検索は充分には行い得ないことを示唆した。しかし、この検索により、高感度免疫組織化学とISHの組み合わせにより、HTLV-1の病原性の検索が可能であることも示唆された。
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