研究概要 |
O.volvulusアクチンmRNAでは、spliced leaderが付加されて成熟mRNAとなるが、平成5年度の研究によって、5'末端非翻訳部にspliced leaderを含まず、intronを有する2つのクローンの存在を明らかにした。2クローンは、intron 4またはintron 5を有していた。これら2クローンの存在から、poly A添加がcis-splicingとtrans-splicingが完了する前に生じ、cis-splicingはtrans-splicingの前に生じることを明らかになった。 平成6年度には、trans-splicingの前にcis-splicingが完了するか否か検討するために、spliced leaderとintronを有するcDNAのクローニングを試みた。intron2,4,5をプローブとしてスクリーニングし、10 actinクローンを得たが、全てintronとspliced leaderを有しないクローンであった。次に、O.volvulus成虫cDNA libraryをspliced leader配列とintron3'末端配列をprimerとして、回旋糸状虫成虫cDNA libraryをPCR増幅をしたが、増幅産物は得られなかった。また、O.volvulus成虫mRNA 5ugをテンプレートとして上記のprimersを用いたRT-PCRを行ったが、陰性であった。 本研究から以下のことが示唆される。(1)約1kbのアクチンmRNAでは、cis-splicingとpolyA付加はtrans-splicingよりも早く終了する。(2)今回得られたクローンがpolyAを有していたことから、cis-splicingとtrans-splicingは、RNA plymeraseII転写装置から離れた後に生じる。(3)cis-splicingは5'末端から順序よく3'末端に向けて行われるのではなく、3次構造に依存してsplicingしやすいところから行われる。(4)線虫では、5'末端のキャップ構造はtrans-splicingによって得られますが、trans-splicingが生じていないのにcis-splicingやpolyA付加が、線虫ではキャップ構造なくして行われている。
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