研究概要 |
米国及び日本の免疫不全患者から分離された非結核性抗酸菌の中で同定不明とされた菌株110株を我々が開発した方法で分類学的に記載する研究を行ってきた。依頼株のうち60株はMycobacteium intracellulareと70%以上のDNAの類似性があり、分類学的にはM.intracellulareに所属することが判明した。これまで、米国ではM.intracellulareによる感染が殆どないとされていたがこれらの実験から、M.intracellulareによる感染症が広く分布して存在するが、表現形質の記載が不十分で、これらの菌種の同定が正確におこなわれていないことがわかった。残り40株は4つの遺伝学的な集団に分類され、その各グループは分類学的には,M.avium,M.intracellulare,M.scroflaceum、及びM.fortuitumにそれぞれ近いが、DNA類似度がそれぞれの基準株と70%以下しかないため、独立した菌群であることが証明された。RNAの解析からこれらの菌株は従来のM.avium,と迅速発育のM.fortuitumの系統に属する菌群であることが明らかになった。今後は遺伝学的方法に基ずいた菌種の同定結果をもとに種の表原形質の記載を新たにおこなう必要が生じてきた。
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