研究概要 |
本研究は、加齢にともなって中枢神経系の代償的な機能が低下すると考えられている中高年の人々が、許容濃度付近の比較的低濃度の有機溶剤に反復暴露された場合に、青年期の人々が暴露を受けた場合の影響と比較して、中枢神経系の機能的障害を生じ易いのではないかと云う仮説を、トルエン暴露の場合について、若齢と老齢ラットを用いて実験的に量-反応関係を検討することを目的としている。 1.初老期暴露群(21カ月齢から12週間暴露) (1)行動学的テストバッテリ-: 100ppm、400ppm、1,000ppm暴露群について、最終暴露打ち切り後16日目(25カ月齢)から学習行動を観察したが、いずれの暴露群も対象群に比べてDRL12secの"時間どり行動"の習得が遅れ、1,000ppm暴露群は最後まで追いつくことが出来なかった。(T.Ikeda et.al.,第65回 日本産業衛生学会 講演集、1992,P.266) (2)in vivo 脳マイクロダイアリシス: 海馬アセチルコリン系において、100ppm、1,000ppmの暴露群に量-反応関係の明瞭な慢性的影響が検出された。(T.Ikeda et.al.,Jpn.J.Ind Health,vol.35,1993,S388) 2.青年期暴露群(19週齢から12週間暴露) (1)行動学的テストバッテリ-: 100ppm,400ppm,1,000ppm暴露群について、最終暴露打ち切り後16日目(33週齢)から実施したDRL12 secの習得過程において、暴露3群間に明瞭な量-反応関係は認められなかったが、暴露群の習得は対照群に比べて有意に早かった。TL1000ppm暴露群においても、老齢期暴露の場合とは異なり、習得の到達度に暴露影響は認められなかった。 (T.Ikeda et.al.,Jpn J.Ind Health,vol.36,1994,S414) in vivo 脳マイクロダイアリシス: 海馬アセチルコリン系において、対照群、100ppm、1,000ppmの3時間に有意な差は検出されなかった。(T.Ikeda et.al.,Jpn J.Ind Health,vol.37,1995,in press) トルエン長期暴露による慢性影響の発現には、暴露された時期の年齢要因が関係することが示唆された。
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