研究概要 |
1.DNA試料を用いてのABO式血液型遺伝子型の判定・・・パラフィン包埋臓器片からDNAを抽出し,血液型糖転移酵素遺伝子の血液型決定部位をPCR増幅と制限酵素処理により検出し,血液型遺伝子型を判定する方法を確立した.非特異的分解を受けたDNAでも300bp程度の断片なら増幅可能であり,PCR産物の一部を鋳型として再び同様の増幅を行えば充分量のDNAが得られた.最長10年を経たパラフィン・ブロックからでも型判定可能であった.疾病の遺伝子診断などへも応用可能な方法といえる. 哺乳動物における血液型抗原物質の発現・・・ヒト,ニホンザル,イヌ,ネコ,ウサギ,ラットの生殖器官と口腔内組職におけるABO式血液型関連糖鎖抗原の発現を免疫組職化学的に調べた.精母細胞と精巣内精子には抗原物質は存在しないが,精巣上体内精子には存在し,前立腺にも認められた.味蕾細胞,舌腺分泌細胞にも糖鎖抗原が発現していた.糖鎖抗原あるいは複合糖質が精子の発生,成熟や味覚受容に関与する可能性が示唆された. 3.各種動物のABO式血液型糖転移酵素遺伝子・・・ヒト,ニホンザル,ブタ,ウサギ,ラット,マウス,チャイニーズ・ハムスター,マストミス,キンギョの血液型糖転移酵素遺伝子の差異を検討した.PCR産物の電気泳動像は動物種により異なり,ニホンザルではヒトのものとハイブリダイズしたが,その他では増幅領域と動物種により結果は異なった.ニホンザルの血液型糖転酵素遺伝子はヒトのそれに酷似する塩基配列であった.血液型決定部位の塩基はヒトのB型と同じであり,上記(2)の結果(ニホンザルではB型物質が発現)と符合した.なお,以上の結果は種差識別にも応用しうるものである.
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