研究概要 |
1:細胞接着因子並びに成長因子を指標とした受傷時期の判定に関する法病理学的研究 損傷の受傷時期やその生活反応の有無を判定するために,法医剖検例により採取した損傷受傷時間が短時間から最長5ケ月を経過した皮膚損傷部19症例61検体,および心臓外傷例3例,心筋梗塞による心破裂例2例,32検体(いずれも受傷期間短時間例)について,抗フィブロネクチン(EN),抗フォン・ヴィレブラント・ファクター(vWF),抗α1プラスミンインヒビター(α1-PI)および抗血小板糖タンパク質IIIa(GPIIIa)の局在を検討した.その結果,FNが損傷期間が短時間から5ケ月経過のものまで局存が認められ,とくに生活反応マーカーとして有用と考えられた.また,vWFはFNと比較して受傷期間等の判定マーカーとしての利用価値はやや低いと思われるが,出血を伴わない外力作用部の判定に利用できると考える. 法医剖検例におけるデスミンの出現様態 死因の違い,あるいは死に至る経過の違いによって,心筋細胞の構成成分に変化が起こるかどうかを筋線維のZ帯に分布する中間フィラメントの1種であるデスミンを指標として検討した.その結果,法医剖検例84例において心筋のデスミンの出現様態に3種類のパターン,すなわち筋線維にデスミンが全く局存しない陰性例(32例),デスミンが筋線維のZ帯に一致して局在する陽性例(17例),およびデスミン陰性部と陽性部とが混交してみられる陰性・陽性混交例(35例)があることが判明した.しかし,今回これらデスミンの出現様態の違いと死因や死に至る過程との間に明確な関連性を認めなかった.しかし,SIDS例においてデスミン陽性例が極めて高率(87.5%)に認められたことが注目される.
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