研究概要 |
アルコール依存形成発現機序を脳報償系神経伝達機能の神経科学的変化から検討した。1.縫線核刺激による側座核DA,5HT放出変動について;縫線核はセロトニン神経系細胞体密度の高い部位であり、また、腹側被蓋野-側座核ドパミン神経系とともに納報償系を構成している。ウィスター系ラットの縫線核へL-グルタメート、5HT,8-OHDPAT(5HT1Aアゴニスト)及びムシモール(GABA1Aアゴニスト)を微量注入ポンプを用い微量注入し、高感度HPLC(科研費購入)で側座核灌流液中のDA,5HT変動を測定した。0.75ugグルタメート、5HT投与により側座核DA,5HT放出増加が認められた。一方、8-OHDPAT投与により、側座核DA,5HT放出は減少した。ムシモール(0.25,0.5ug)投与では、側座核蓋野DA神経系機能を制御している。2.5HT3アンタゴニスト側座核投与によるエタノール刺激誘導DA,5HT放出変動について;ウィスター系雄ラットを用いて、エタ-ノル局所(側座核)投与灌流投与により側座核DA,5HT放出は増加した。5HT3アンタゴニストICS205-930(25,50,100uM)微量側座核灌流投与を行うと、エタノール誘発側座核DA放出は、ICS205-930の用量依存的に抑制され、100uMICS205-930では完全に側座核DA放出は抑制された。エタノール刺激側座核DA放出に、5HT3レセプターが大きく関与していることが認められた。3.アルコール局所投与、腹腔投与による扁桃核DA,5HT放出変動ついて;エタノール腹腔投与、扁桃核局所投与により扁桃核DA,5HT放出は増加した。しかし、エタノール刺激扁桃核5HT放出は、DA放出より時間的に遅延する傾向を認めた。4.アルコール長期投与による側座核神経伝達放出機能変化について、3週間10%エタノール水及び通常飼料(体重減少その他生理的変化なし)飼育後、ラット側座核を40mMK^+で灌流刺激を行うと、アルコール飼育群が対照群と比べて約2倍の側座核DA放出増加を示した。一方、アルコール(100uM)による側座核刺激においては、両群ともに約200%DA放出増加を示したが、有意の差は認められなった。長期アルコール投与摂取により、神経伝達放出機能のK^+,電位刺激の感受性がより増加したことが認められた。アルコール摂取による神経伝達放出機能の感受性亢進、神経伝達機能の補完作用(適応変化)という神経薬理学的に検討したアルコール依存形成の仮説を導くことができた。
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