研究概要 |
平成5年,ホルマリン固定リンパ球からのDNA抽出法の検討を中心に行ってきた。しかし,ホルマリン固定臓器に比べ,ホルマリン固定リンパ球は急速に細胞内へホルマリンが浸透し,抽出されるDNAは急激な低分子化現象が起こることが判明した。そこで6年度はHLA検査後の残りの少量のリンパ球を用いてDNA抽出を行い,そのDNAについてHLA DQ α,LDKR,GYPA,HBGG,D7S8およびGC型の解析を行った。 1.HLA DQ α型については,26家系のHLA検査結果からA-B-Cハプロタイプ型を判定し,その結果とHLA DQ α型との連鎖傾向を調査した。その結果、A24-Cwx-BW52とDQ α1.3,A24-Cw7-B7とDQ α1.1,A2-Cw7-B7とDQα1.1型等の強い連鎖関係が判明した。また特徴的な連鎖としてA30-Cw6-B13とDQ α2型のハプロタイプがみられた。この連鎖は集団遺伝学的みてA30-Cw6-B13の多くみられる中国や韓国との人種的移動に重要なマーカーになりえるものと示唆された。 2.LDKR,GYPAL,HBGG,D7S8,GC型については,257名を対象として各型の遺伝子頻度の分布を調べると共に,その親子鑑定への有用性を検討した。各型の検出は,一回の検査で5座位が検出可能なPM-PCRキットを用いて実施した。判明した各遺伝子型の観察値はHardy-Weinbergの法則に基づく期待値によく一致した。またGYPAとGCについては,MN式とGC型との対応性を確認したところ,MN式はM=GYPA A,N=GYPA B,GC型は2=GC A,1F=GC,1S=GC Cの完全な対応性が確認された。さらに親子鑑定資料については肯定例(14件)では,PM-PCR法ですべて矛盾なく,父権肯定総合確率も平均77%を示した。また否定例では,11件中8件がPM-PCP法で否定され,親子鑑定に非常に有用性がもたれる結果であった。 以上,HLA検査後の残りの少量のリンパ球からでも充分なDNA解析が可能であった。
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