研究概要 |
本年度はまず、クローン化したPAF受容体に連関するセカンドメッセンジャーシステムを詳細に解析した。内因性にPAF受容体を発現している細胞において既に報告されている、ホスホリパーゼC,A_2,の活性化、アデニル酸シクラーゼの抑制に加えて、クローン化しPAF受容体は分化、増殖の上位のレギュレーターであるMAPキナーゼ、MAPキナーゼキナーゼをきわめて強く活性化することが明らかになった(Hnda Z.,et al.J.Biol.Chem.267,2307-2315,1994)。すなわち、単一の受容体がこれらの多彩なセカンドメッセンジャーと連関して、細胞の諸機能を発生させることが証明された。PAFは炎症、アレルギー作用のみならず神経細胞の神経突起成長、培養細胞のガン化、リンパ球の増殖促進等の作用を持つことが知られている。クローン化したPAF受容体に連関するMAPキナーゼ、MAPキナーゼキナーゼはこれらの長期にわたる作用を説明する上位のレギュレーターである可能性が強い。興味深いことに、PAF受容体を介するMAPキナーゼの活性化は、チロシンキナーゼ型の受容体の場合と異なり、代表的なガン遺伝子産物であるRasのGDP-GTP変換を伴わない(Honda Z.,et al.J.Biol.Chem.1994)。すなわち、G蛋白連関型受容体の関与する悪性腫瘍においては未知の情報伝達機構を使って異常増殖が生じている可能性を示すものであり、治療的な側面からも重要な情報であると考えられる。 研究課題の受容体の構造機能相関に関しても幾つかの知見が得られた。モルモット(Honda,et al.,Nature 1991)、ラット(Bito,Honda,et al.,Eur.J.Biochem.in press)、ヒト受容体(Nakamura,Honda,et al.,J.Biol.Chem.1991)の構造比較から、第三膜貫通部位にG蛋白質連関部位のコンセンサス配列を同定した(投稿準備中)。脱感作に必要な部位をC-末端細胞内領域のセリン、スレオニンにマップした(Takano,Honda,et al.,J.Biol.Chem.投稿中)。
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