研究概要 |
ヒトでは体内において,インターフェロンαが内因性に産生されしかも一定の正常域内にあることを示した。その際,全身性エリテマトーデスでは血中のみならず髄液中のインターフェロンαが上昇し,特に髄液中のインターフェロンαが精神症状に特異的に著明な高値をとり,他のサイトカインの上昇しないことなどを見出した。 さらに,本疾患の特に強い精神症状を呈した例(死亡例)では,脳のニューロンにインターフェロンαが強く染色され,本疾患の脳内でのインターフェロンα産生亢進が示唆された。 このことは剖検脳から抽出したmRNAのRT-PCR法にて,本疾患ではインターフェロンαが高いこと,しかしIFNγ,TNF,IL1,IL4,IL6,G-CSF等の他のサイトカインmRNAの増加していないこと,そして同じインターフェロンα内の分子亜種ではインターフェロンα1,インターフェロンα2,α4b等の強く高値であること等を見出した。このように私共は,全身性エリテマトーデスの精神症状とインターフェロンα産生亢進との間に一対一対応のあることを見出したが,このことはインターフェロンαの異常高値が病態の原因となることを指摘すると共に,インターフェロンαのヒト脳における生理的役割りに関する示唆を与えてくれる。今後,神経系におけるインターフェロンαの作用の解明は意義あるものと思われる。
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