研究概要 |
脳血管障害急性期における高張液投与による抗浮腫治療が広く行われているが脳浮腫に伴う脳循環代謝,及び血液レオロジー因子の障害に対するその効果,特に抗脳浮腫作用が二次的脳循環代謝代謝障害の増悪に対してどのように作用して脳循環代謝,血液レオロジー因子の改善作用を示すのかに関しての検討は十分に行われていない.そこで本研究は脳虚血により生ずる脳浮腫に伴う二次的な脳循環代謝障害増悪に対する高張液投与による抗浮腫治療の遮断効果を断層局所脳循環とP-31NMR spectro-scopyによる脳内エネルギー代謝,及び血液レオロジー因子の経時変化の観察の3方向より追跡,高張液投与の二次的な脳循環代謝障害に対する改善効果を客観的に判定し,安易に行われ易い抗浮腫治療の脳循環代謝,血液レオロジー面よりの再評価を行うことを目的とした.平成5年度より臨床研究をスタートし,実験的エネルギー代謝測定に関しては抗浮腫剤の投与時期や投与量,及び脳内水分含量の測定に関して基本的検討を行い平成5年度後半よりスタデイを開始した. 臨床研究に関しては脳塞栓症における脳梗塞volumeを定量し,l-123 lMP SPECTによる断層局所脳血流測定rにより求められた両側半球の各関心領域における左右非対称率(Al:asymmety index)との相関を評価した所,有意の正の相関を示すことを見出した.また脳梗塞volumeの定量においては300mlの脳梗塞volumeを境にして患者の生命予後が有意の差を示すことを見出した.臨床的研究に関しては血液レオロジー因子の変化の追跡を平行して行った所,慢性期迄遷延持続する血液レオロジーの異常,すなわち血漿フィブリノゲン濃度の高値が遷延持続して認められることを見出した. 更に実験的研究に関しては脳内エネルギー代謝の回復過程の経時変化の検討は両側総頸動脈閉塞砂ネズミ・モデルにおいて10% glycerol溶液,20% mannitol溶液,あるいは生食を注入しP-31 NMR spect-roscopyにより脳内pH,PCr/Pi比,β-ATP/Pi比の各脳内エネルギー代謝パラメーターの変化を経時的に追跡した所、脳内pHはmannitol群で再灌竜流2時間後でのみ他群に比し高値を示し(p<0.05),PCr/pi比はglycerol群では再灌流6時間後に,mannitol群では8時間後に生食群より高値を示した(各々p<0.05,p<0.01)また,β-ATP/Pi比はglycerol群において再潅流6時間後にmannitol群や生食群より高値を示した(各々p<0.05,p<0.01).以上より実験的脳虚血急性期において高張液投与による脳内エネルギー代謝の有意の改善を確認した.
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