研究概要 |
肝細胞膜蛋白のADP-リボシル化反応が長期飲酒によりいかに変動するかについてラットのアルコール性肝障害モデルを用いて、毒素依存性のGTP結合蛋白のADP-リボシル化反応と毒素非依存性、すなわち内在性のADP-リボシル化反応の両面から検討した。アルコール含有液体飼料により4-6週間のpair-feedingを行ったラットより密度勾配遠心法により肝細胞膜分画を分離精製し実験に供した。促進性または抑制性G蛋白のADP-リボシル化反応のプローブとしては、dithiothreitolにより活性化させたコレラ毒素A1フラグメントおよび百日咳毒素を用いた。ADP-リボシル化された蛋白はSDS-PAGE後、オートラジオグラフィーにより検出した。ラット肝細胞膜を活性化コレラ毒素A1フラグメントと反応させると促進性G蛋白(Gs)のαサブユニットに相当する45kDa蛋白がADP-リボシル化されたが、その程度は長期飲酒により著明に増強した。また活性化百日咳毒素による抑制性G蛋白(Gi)のαサブユニットに相当する41kDa蛋白のADP-リボシル化も長期飲酒によりやや増強した。さらに内在性の反応では、肝細胞膜蛋白のうち58kDa,44kDa,40kDa,33kDa蛋白のADP-リボシル化が認められたが、このうち58,44,40kDa蛋白ではGTP依存性であり、しかも、58kDaでは長期飲酒によりそのADP-リボシル化が著明に亢進した。このように慢性エタノール投与により、ラット肝細胞膜蛋白のADP-リボシル化反応の亢進が、毒素依存性および非依存性(すなわち内在性)に認められた。この現象をG蛋白を介する情報伝達系に結び付けることにより、また内在性にADP-リボシル化される蛋白の同定を進めることによりアルコールによる肝細胞障害とADP-リボシル化反応との関連が見出だされると考えられ、さらに、研究を進める予定である。
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